とまれかうまれ、とく破りてむ!

行き場を失った物語の墓場

突発性東京旅行の序

首都に吹き降ろす風は同時期の京都より幾分か冷たかった。あるいは人も冷たいのかもしれないと邪推をたくらむのは午後11時の高田馬場駅構内であった。しかし改札を出るや否や待ち受けていたのは恐るべき早大生の喧騒であった。過剰なアルコール摂取によって…

『野獣1週間』第1章「名前のある怪物」

洛中。 百万遍交差点から南進すること3キロ弱、ただでさえ偏屈京大生の心の如く道幅が狭いため自転車通行に向いていない東大路通りがさらに通行者を苦しめんと険しい勾配をつけだすあたりに八坂神社という日本屈指の神様を祀る不思議物件が居座っている。お…

まえがき

「とまれかうまれ、とく破りてむ」とは、今や比叡山の片隅に埋まってしまい誰にも見向きされなくなった日本最古の道化師、紀貫之公の言葉である。日本文学史にその痴態を明々白々遺した奇行文(または紀行文)であるところの『土佐日記』は、執筆するうちに作…